「オロチ数」の発展その1: 「キュービコリ数」
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「オロチ数」の発展その1: 「キュービコリ数」
本記事は素数大富豪アドベントカレンダー2024の5日目の記事です。
昨日は巨大なナメクジさんの四つ子素数に関する記事でした。じつは本記事も四つ子素数に絡む発展があります。
今回の重要キーワードは麻雀用語の「スジ」です。
マスプライム杯2024に向けた研究
マスプライム杯に向けて、「四つ子素数よりも便利なオールマイティ数」の戦略を研究しています。#素数大富豪 #マスプライム杯 https://t.co/tbKuQr1aiA
— 岩淵夕希物智 (@butchi_y) August 27, 2024
今年のマスプライム杯は、本記事の戦略がかなりいい筋をいってると感じ、「勝てるぞ」と思えるところまでいきました。まあ結局のところ初戦敗退したんですけどね…。
それはともかく、その戦略を惜しげもなく披露します。
麻雀の「スジ」の流用
麻雀用語の「スジ」とは、ロンやツモを出しやすくするための基本概念のひとつで、
1-4-7 | 2-5-8 | 3-6-9
(よく言うのは中国語で「イースーチー」「リャンウーパー」「サブローキュー」というまとめ方)
と全部で3パターンある、3つ飛びの3つ組のことです。
素数大富豪では、本来のスジの原理とは全く関係がないのですが、組み合わせとして基本的にこの3パターンのどれかを用いて出す札を構成する手法を確立しました。
原理
本来のオロチ数は、1,2,4,5,7,8などの主に6種類の頭を持つ数として考えていました。
ただ、これだとすべて素数であるようなオロチ数(これを正オロチ数と呼ぶことにします)候補が激減してしまう(合成数が混ざった準オロチ数ばかり見つかる)ことになります。
そこで、先頭に置くのを3種類の数(先ほどのスジのパターンいずれか)に限定し、それによって選択肢が広がったことを良いことに末尾が双子 (1,3 | 7,9) や四つ子 (1,3,7,9) 、あるいはセクシー素数(1,7 | 3,9) (素数とは限らない場合セクシー数とは言わない?)を置いて、双子(四つ子)やオロチ数の「1枚の自由度」を使える状態より強く「2枚のオールマイティーカード」を使えるようにするという戦術を提案します。
たとえば、先頭に2,5,8、末尾に1,3を用いた次の6つの数はすべて素数です。
(以下、 太字 は素数、 斜体 は3の倍数、通常文字は非素数とします)
末尾1 | 末尾3 | |
---|---|---|
先頭2 | 275591 | 275593 |
先頭5 | 575591 | 575593 |
先頭8 | 875591 | 875593 |
命名
このように先頭と末尾に自由度を持った「自由自在な」構成で作る数の集まりを、オロチ数と同様に伝説上の生き物の名を借りて「キュービコリ数」(九尾狐狸数)と命名します!
着想ヒント: 水曜日のカンパネラ『たまものまえ』
なお、大きく対象としては「3の倍数チェックは必ず行ったうえで素数の確率が高い」という割と緩いものを考えていました。
1-4-7スジ
末尾1 | 末尾3 | 末尾7 | 末尾9 | |
---|---|---|---|---|
先頭1 | 1215451 | 1215453 | 1215457 | 1215459 |
先頭4 | 4215451 | 4215453 | 4215457 | 4215459 |
先頭7 | 7215451 | 7215453 | 7215457 | 7215459 |
1215451
⇒ Q15451
のように、先頭の1Xを絵札に変換できる可能性があるので柔軟性が出ます。
2-5-8スジ
これはとにかく無条件で偶数消費できるのが大メリットです(5は偶数)。
末尾1 | 末尾3 | 末尾7 | 末尾9 | |
---|---|---|---|---|
先頭2 | 2814561 | 2814563 | 2814567 | 2814569 |
先頭5 | 5814561 | 5814563 | 5814567 | 5814569 |
先頭8 | 8814561 | 8814563 | 8814567 | 8814569 |
3-6-9スジ
弥勒オロチ数(ミロクオロチすう)とも。(これ自分が名付けたんだっけ…?)
末尾1 | 末尾3 | 末尾7 | 末尾9 | |
---|---|---|---|---|
先頭3 | 3431431 | 3431433 | 3431437 | 3431439 |
先頭6 | 6431431 | 6431433 | 6431437 | 6431439 |
先頭9 | 9431431 | 9431433 | 9431437 | 9431439 |
メカニズムがわかりやすく、3の倍数チェックがしやすい、つまりスジ(追加するカード)以外のカード(例: 431433
)が3の倍数になっていたら全体(例: 3431433
)も3の倍数、通常の3倍チェックと同じやり方で済む(より混乱しにくい)というメリットがあるかと思います。
「スジ」ではない組み合わせ
2-4-8
こんな風に二冪で偶数を無条件偶数消費することもできます。
末尾1 | 末尾3 | 末尾7 | 末尾9 | |
---|---|---|---|---|
先頭2 | 2685961 | 2685963 | 2685967 | 2685969 |
先頭4 | 4685961 | 4685963 | 4685967 | 4685969 |
先頭8 | 8685961 | 8685963 | 8685967 | 8685969 |
1-2-4-8
これも二冪ですが、偶数消費に加えて絵札を代替で出せる場合があるのが特徴です。
末尾1 | 末尾3 | 末尾7 | 末尾9 | |
---|---|---|---|---|
先頭1 | 1199181 | 1199183 | 1199187 | 1199189 |
先頭2 | 2199181 | 2199183 | 2199187 | 2199189 |
先頭4 | 4199181 | 4199183 | 4199187 | 4199189 |
先頭8 | 8199181 | 8199183 | 8199187 | 8199189 |
A-J-K
A (1) と絵札を選択できるのが特徴です。
末尾1 | 末尾3 | 末尾7 | 末尾9 | |
---|---|---|---|---|
先頭A(1) | A954311 | A954313 | A954317 | A954319 |
先頭J | J954311 | J954313 | J954317 | J954319 |
先頭K | K954311 | K954313 | K954317 | K954319 |
他にも組み合わせ的にはもっとあるはずです。
2-5-8スジのキュービコリ数を大放出
四つ子素数は末尾1,3,7,9の自由度(4通り)があって、
— 岩淵夕希物智 (@butchi_y) August 27, 2024
私が命名したオロチ素数(オロチ数)は先頭1,2,4,5,7,8などの自由度(約6通り)があるけれど、
両方の性質を備え持ったかなり自由が高い数はまだ見つけられていません。
挙動を見るに、2つの自由度を合わせて6〜8通りが現実ラインかなと。#素数大富豪
マスプライム杯2024に向けた戦略研究で、自由度2で出せるのはせいぜい6個か8個でということが見えてきました。
そして戦略を立てるうえでは、先頭には 2-5-8
を置くのが最適だという見解に至りました。
以下、厳選したキュービコリ数です。
末尾1 | 末尾3 | 末尾7 | 末尾9 | |
---|---|---|---|---|
先頭2 | 295311 | 295313 | 295317 | 295319 |
先頭5 | 595311 | 595313 | 595317 | 595319 |
先頭8 | 895311 | 895313 | 895317 | 895319 |
末尾J(11) | 末尾K(13) | |
---|---|---|
先頭2 | 2445J7J | 2445J7K |
先頭5 | 5445J7J | 5445J7K |
先頭8 | 8445J7J | 8445J7K |
末尾1 | 末尾3 | 末尾7 | 末尾9 | |
---|---|---|---|---|
先頭2 | 27982621 | 27982623 | 27982627 | 27982629 |
先頭5 | 57982621 | 57982623 | 57982627 | 57982629 |
先頭8 | 87982621 | 87982623 | 87982627 | 87982629 |
末尾1 | 末尾3 | 末尾7 | 末尾9 | |
---|---|---|---|---|
先頭2 | 279146291 | 279146293 | 279146297 | 279146299 |
先頭5 | 579146291 | 579146293 | 579146297 | 579146299 |
先頭8 | 879146291 | 879146293 | 879146297 | 879146299 |
末尾1 | 末尾3 | 末尾7 | 末尾9 | |
---|---|---|---|---|
先頭2 | 257942381 | 257942383 | 257942387 | 257942389 |
先頭5 | 557942381 | 557942383 | 557942387 | 557942389 |
先頭8 | 857942381 | 857942383 | 857942387 | 857942389 |
末尾1 | 末尾3 | 末尾7 | 末尾9 | |
---|---|---|---|---|
先頭2 | 262581791 | 262581793 | 262581797 | 262581799 |
先頭5 | 562581791 | 562581793 | 562581797 | 562581799 |
先頭8 | 862581791 | 862581793 | 862581797 | 862581799 |
おさらい
嬉しいこと(メリット)
一気に覚えられる素数の個数が増えるのと、 出すときも自由度が2つ、言ってしまえば四つ子の2倍お得です。 しかも四つ子部分は奇数でもオロチ部分で偶数が使えるのがかなり大きいです。
難しいこと(デメリット)
記憶法がまだ確立できていません。先頭と末尾を抜いただけの数字列を憶えるだけだと、それが素数なのかと誤解してしまう危険性があります。私がマスプライム杯2024に挑んだときは f6258179d
など独自のアルファベットを付けて憶えていました。
また、本来のキュービコリ数はべつに素数でないものを含んでてもいいのですが、 今回は「上質な」キュービコリ数を厳選したので、たくさん暗記するには量を用意しきれません(まあそれでも既に多いは多いですが)。
完全キュービコリ数をさがせ!
先頭2,5,8
、末尾1,3,7,9
としたキュービコリ数で、3の倍数も含まず、すべて(12個)が素数である組み合わせがあるかどうか、これが未解決問題です。
先ほどの例の中でも、狙ったわけではないですが「9」がいいところで、現在の最高は10。 必ず7, 11, 13, 17のどれかを含んで完全にならない、みたいなのが起きているような気もしつつ、かなり大きい素因数を持つ場合あり。
素数大富豪の戦略研究が数論の新しい研究成果に発展したら面白いなと思いつつ、また新たな戦略研究をしていきたいです。
そして「その2」もお楽しみに。
明日はふみ川まうりさんの 博物ふぇす振り返り の記事です。素数大富豪の普及活動もとても大事ですね!!