「オロチ数」の発展その1: 「キュービコリ数」

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「オロチ数」の発展その1: 「キュービコリ数」

本記事は素数大富豪アドベントカレンダー2024の5日目の記事です。

昨日は巨大なナメクジさんの四つ子素数に関する記事でした。じつは本記事も四つ子素数に絡む発展があります。

今回の重要キーワードは麻雀用語の「スジ」です。

マスプライム杯2024に向けた研究

今年のマスプライム杯は、本記事の戦略がかなりいい筋をいってると感じ、「勝てるぞ」と思えるところまでいきました。まあ結局のところ初戦敗退したんですけどね…。

それはともかく、その戦略を惜しげもなく披露します。

麻雀の「スジ」の流用

麻雀用語の「スジ」とは、ロンやツモを出しやすくするための基本概念のひとつで、

1-4-7 | 2-5-8 | 3-6-9 (よく言うのは中国語で「イースーチー」「リャンウーパー」「サブローキュー」というまとめ方)

と全部で3パターンある、3つ飛びの3つ組のことです。

素数大富豪では、本来のスジの原理とは全く関係がないのですが、組み合わせとして基本的にこの3パターンのどれかを用いて出す札を構成する手法を確立しました。

原理

本来のオロチ数は、1,2,4,5,7,8などの主に6種類の頭を持つ数として考えていました。

ただ、これだとすべて素数であるようなオロチ数(これを正オロチ数と呼ぶことにします)候補が激減してしまう(合成数が混ざった準オロチ数ばかり見つかる)ことになります。

そこで、先頭に置くのを3種類の数(先ほどのスジのパターンいずれか)に限定し、それによって選択肢が広がったことを良いことに末尾が双子 (1,3 | 7,9) や四つ子 (1,3,7,9) 、あるいはセクシー素数(1,7 | 3,9) (素数とは限らない場合セクシー数とは言わない?)を置いて、双子(四つ子)やオロチ数の「1枚の自由度」を使える状態より強く「2枚のオールマイティーカード」を使えるようにするという戦術を提案します。

たとえば、先頭に2,5,8、末尾に1,3を用いた次の6つの数はすべて素数です。

以下、 太字 は素数、 斜体 は3の倍数、通常文字は非素数とします

末尾1末尾3
先頭2275591275593
先頭5575591575593
先頭8875591875593

命名

このように先頭と末尾に自由度を持った「自由自在な」構成で作る数の集まりを、オロチ数と同様に伝説上の生き物の名を借りて「キュービコリ数」(九尾狐狸数)と命名します!

着想ヒント: 水曜日のカンパネラ『たまものまえ』

なお、大きく対象としては「3の倍数チェックは必ず行ったうえで素数の確率が高い」という割と緩いものを考えていました。

1-4-7スジ

末尾1末尾3末尾7末尾9
先頭11215451121545312154571215459
先頭44215451421545342154574215459
先頭77215451721545372154577215459

1215451Q15451 のように、先頭の1Xを絵札に変換できる可能性があるので柔軟性が出ます。

2-5-8スジ

これはとにかく無条件で偶数消費できるのが大メリットです(5は偶数)。

末尾1末尾3末尾7末尾9
先頭22814561281456328145672814569
先頭55814561581456358145675814569
先頭88814561881456388145678814569

3-6-9スジ

弥勒オロチ数(ミロクオロチすう)とも。(これ自分が名付けたんだっけ…?)

末尾1末尾3末尾7末尾9
先頭33431431343143334314373431439
先頭66431431643143364314376431439
先頭99431431943143394314379431439

メカニズムがわかりやすく、3の倍数チェックがしやすい、つまりスジ(追加するカード)以外のカード(例: 431433)が3の倍数になっていたら全体(例: 3431433)も3の倍数、通常の3倍チェックと同じやり方で済む(より混乱しにくい)というメリットがあるかと思います。

「スジ」ではない組み合わせ

2-4-8

こんな風に二冪で偶数を無条件偶数消費することもできます。

末尾1末尾3末尾7末尾9
先頭22685961268596326859672685969
先頭44685961468596346859674685969
先頭88685961868596386859678685969

1-2-4-8

これも二冪ですが、偶数消費に加えて絵札を代替で出せる場合があるのが特徴です。

末尾1末尾3末尾7末尾9
先頭11199181119918311991871199189
先頭22199181219918321991872199189
先頭44199181419918341991874199189
先頭88199181819918381991878199189

A-J-K

A (1) と絵札を選択できるのが特徴です。

末尾1末尾3末尾7末尾9
先頭A(1)A954311A954313A954317A954319
先頭JJ954311J954313J954317J954319
先頭KK954311K954313K954317K954319

他にも組み合わせ的にはもっとあるはずです。

2-5-8スジのキュービコリ数を大放出

マスプライム杯2024に向けた戦略研究で、自由度2で出せるのはせいぜい6個か8個でということが見えてきました。

そして戦略を立てるうえでは、先頭には 2-5-8 を置くのが最適だという見解に至りました。

以下、厳選したキュービコリ数です。

末尾1末尾3末尾7末尾9
先頭2295311295313295317295319
先頭5595311595313595317595319
先頭8895311895313895317895319
末尾J(11)末尾K(13)
先頭22445J7J2445J7K
先頭55445J7J5445J7K
先頭88445J7J8445J7K
末尾1末尾3末尾7末尾9
先頭227982621279826232798262727982629
先頭557982621579826235798262757982629
先頭887982621879826238798262787982629
末尾1末尾3末尾7末尾9
先頭2279146291279146293279146297279146299
先頭5579146291579146293579146297579146299
先頭8879146291879146293879146297879146299
末尾1末尾3末尾7末尾9
先頭2257942381257942383257942387257942389
先頭5557942381557942383557942387557942389
先頭8857942381857942383857942387857942389
末尾1末尾3末尾7末尾9
先頭2262581791262581793262581797262581799
先頭5562581791562581793562581797562581799
先頭8862581791862581793862581797862581799

おさらい

嬉しいこと(メリット)

一気に覚えられる素数の個数が増えるのと、 出すときも自由度が2つ、言ってしまえば四つ子の2倍お得です。 しかも四つ子部分は奇数でもオロチ部分で偶数が使えるのがかなり大きいです。

難しいこと(デメリット)

記憶法がまだ確立できていません。先頭と末尾を抜いただけの数字列を憶えるだけだと、それが素数なのかと誤解してしまう危険性があります。私がマスプライム杯2024に挑んだときは f6258179d など独自のアルファベットを付けて憶えていました。

また、本来のキュービコリ数はべつに素数でないものを含んでてもいいのですが、 今回は「上質な」キュービコリ数を厳選したので、たくさん暗記するには量を用意しきれません(まあそれでも既に多いは多いですが)。

完全キュービコリ数をさがせ!

先頭2,5,8、末尾1,3,7,9としたキュービコリ数で、3の倍数も含まず、すべて(12個)が素数である組み合わせがあるかどうか、これが未解決問題です。

先ほどの例の中でも、狙ったわけではないですが「9」がいいところで、現在の最高は10。 必ず7, 11, 13, 17のどれかを含んで完全にならない、みたいなのが起きているような気もしつつ、かなり大きい素因数を持つ場合あり。

素数大富豪の戦略研究が数論の新しい研究成果に発展したら面白いなと思いつつ、また新たな戦略研究をしていきたいです。

そして「その2」もお楽しみに。

明日はふみ川まうりさんの 博物ふぇす振り返り の記事です。素数大富豪の普及活動もとても大事ですね!!

著者紹介

岩淵夕希物智 butchi_y

言語を作る博士(工学)

ART, Research, Techの人

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