コラッツ問題の複素化 (二次元化) で見つけた「似たループ」と「長いループ」

投稿日:
research
math
collatz

コラッツ問題の複素化 (二次元化) で見つけた「似たループ」と「長いループ」

コラッツ問題は「偶数は2で割る、奇数は3倍して1を足す」という操作を繰り返すと、最終的に1に到達するかどうかを問う問題です。

そして、コラッツ予想とは、全ての正の整数についてこの操作を繰り返すと最終的に1に到達する、という予想です。

この予想は未解決問題として有名ですが、私はこのコラッツ問題を「複素数」(ガウス整数)に拡張する方法を考案しました。

この拡張方法については、以前の記事「これも一つのコラッツ問題の複素化」で詳しく説明しています。

これも一つのコラッツ問題の複素化

コラッツ問題は、奇数に対して「3倍して1を足す」という操作を行いますが、これは奇数の性質として、その結果が偶数になることがうまく働いています。逆に、仮に偶数に対して「3倍して1を足す」を行うと、結果は奇数になってしまい、次に2で割ることができなくなります。

複素整数での偶奇性に着目すると、奇数・偶数の概念に4通りの選択肢が存在します。

  • 実部が奇数で虚部も奇数
  • 実部が奇数で虚部が偶数
  • 実部が偶数で虚部が奇数
  • 実部が偶数で虚部も偶数

実部も虚部も偶数ならば、2で割ることができます。実部も虚部も奇数の場合、3倍して1を足すと、実部も虚部も偶数になります。したがって、実部も虚部も奇数の場合に「3倍して1を足す」を適用するのは自然です。

しかし、実部が奇数で虚部が偶数、あるいは実部が偶数で虚部が奇数の場合には、「3倍して1を足す」を適用すると、実部か虚部のどちらかが奇数のまま残ってしまいます。これでは次に2で割ることができません。

このガウス整数の偶奇性は以前にも見覚えがあったので、その時の経験を活かして、複素数版のコラッツ問題を定義しました。

前回の記事では、各象限で対称になるように定義しましたが、今回は以下のように定義します。(実部 と虚部 がともに非負整数)

また、挙動としては、対照的なものになりますので、基本的に とします。

偶奇判定以外に実部と虚部の関わりは入ってないため、ベクトルとして定義することもできます。

こっちの方が見やすいかもしれません。

たとえば、初期値 から始めると、以下のようになります。

(20, 32), (10, 16), (5, 8), (16, 24), (8, 12), (4, 6), (2, 3), (6, 10), (3, 5), (10, 16), (5, 8), ...

このように、既に通ってきた点に戻って来て、以降は同じループを繰り返します。

発散していそうな長い列

また、初期値 のような絶対値が小さい点から始めると、以下のようになります。

(3, 1), (10, 4), (5, 2), (16, 6), (8, 3), (24, 10), (12, 5), (36, 16), (18, 8), (9, 4), (28, 12), (14, 6), (7, 3), (22, 10), (11, 5), (34, 16), (17, 8), (52, 24), (26, 12), (13, 6), (40, 18), (20, 9), (60, 28), (30, 14), (15, 7), (46, 22), (23, 11), (70, 34), (35, 17), (106, 52), (53, 26), (160, 78), (80, 39), (240, 118), (120, 59), (360, 178), (180, 89), (540, 268), (270, 134), (135, 67), (406, 202), (203, 101), (610, 304), (305, 152), (916, 456), (458, 228), (229, 114), (688, 342), (344, 171), (1032, 514), (516, 257), (1548, 772), (774, 386), (387, 193), (1162, 580), (581, 290), (1744, 870), (872, 435), (2616, 1306), (1308, 653), (3924, 1960), (1962, 980), (981, 490), (2944, 1470), (1472, 735), (4416, 2206), (2208, 1103), (6624, 3310), (3312, 1655), (9936, 4966), (4968, 2483), (14904, 7450), (7452, 3725), (22356, 11176), (11178, 5588), (5589, 2794), (16768, 8382), (8384, 4191), (25152, 12574), (12576, 6287), (37728, 18862), (18864, 9431), (56592, 28294), (28296, 14147), (84888, 42442), (42444, 21221), (127332, 63664), (63666, 31832), (31833, 15916), (95500, 47748), (47750, 23874), (23875, 11937), (71626, 35812), (35813, 17906), (107440, 53718), (53720, 26859), (161160, 80578), (80580, 40289), (241740, 120868), (120870, 60434), ...

このように、非常に長い列が生成され、ループに入る気配がありません。

察するに、通常のコラッツの問題(古典コラッツ問題と呼ぶとします)と違って、実部と虚部のどちらかが奇数である場合にも「3倍して1を足す」を適用するため、値が急激に増加しやすくなっている(減るタイミングが少ない)ようです。

ループ

一方で、いくつかのループも発見しました。

(1, 0), (4, 0), (2, 0), (1, 0), ...

これは古典コラッツ問題で必ず到達するループと同じです。

ほぼ自明なループ

(1, 1), (4, 4), (2, 2), (1, 1), ...

これは、実部と虚部が等しい場合に自明に存在するループです。

短いループ

複素化されたコラッツ問題の短いループ

以下のループは周期8と比較的短いループです。

(3, 2), (10, 6), (5, 3), (16, 10), (8, 5), (24, 16), (12, 8), (6, 4), (3, 2), ...

その他、周期13のループが5種類見つかりました。

この5種類を見比べると、実部と虚部の値が似ていることがわかります。

挙動としてはおそらく、ループにちょうどいい値というものが存在していて、その周辺に似たループができているのだと考えられます。

とても長いループ

探索を続けていると、非常に長いループも見つかりました。

以下のループは周期が75もあります。

(59, 42), (178, 126), (89, 63), (268, 190), (134, 95), (402, 286), (201, 143), (604, 430), (302, 215), (906, 646), (453, 323), (1360, 970), (680, 485), (2040, 1456), (1020, 728), (510, 364), (255, 182), (766, 546), (383, 273), (1150, 820), (575, 410), (1726, 1230), (863, 615), (2590, 1846), (1295, 923), (3886, 2770), (1943, 1385), (5830, 4156), (2915, 2078), (8746, 6234), (4373, 3117), (13120, 9352), (6560, 4676), (3280, 2338), (1640, 1169), (4920, 3508), (2460, 1754), (1230, 877), (3690, 2632), (1845, 1316), (5536, 3948), (2768, 1974), (1384, 987), (4152, 2962), (2076, 1481), (6228, 4444), (3114, 2222), (1557, 1111), (4672, 3334), (2336, 1667), (7008, 5002), (3504, 2501), (10512, 7504), (5256, 3752), (2628, 1876), (1314, 938), (657, 469), (1972, 1408), (986, 704), (493, 352), (1480, 1056), (740, 528), (370, 264), (185, 132), (556, 396), (278, 198), (139, 99), (418, 298), (209, 149), (628, 448), (314, 224), (157, 112), (472, 336), (236, 168), (118, 84), (59, 42), ...

複素化されたコラッツ問題のとても長いループ

古典コラッツ問題で言う「27」から始まる遷移とは訳が違って、長い遷移ののちにいずれ1に到達するわけではなく、このループの中を永遠に回り続けます。

このループは非常に長いですが、実際にはもっと長いループも存在する可能性があります。

が、かなり広い範囲を探索しても見つからないため、非常に稀なループであることは間違いなさそうです。

まとめ

複素数版のコラッツ問題を定義し、いくつかのループと非常に長い列を発見しました。 この複素数版コラッツ問題の性質や、発見したループの特徴については、今後さらに研究を進めていきたいと考えています。

著者紹介

岩淵夕希物智 butchi_y

言語を作る博士(工学)

ART, Research, Techの人