これも一つのコラッツ問題の複素化
これも一つのコラッツ問題の複素化
本記事は日曜数学アドベントカレンダー2025の5日目の記事です。
私が研究したコラッツ問題の最新の成果です。
コラッツ問題は「与えられた値が偶数ならその値を2で割り、奇数なら3倍して1を足す」という操作を繰り返すと、最終的に1に到達するかどうかを問う問題です。
そして、コラッツ予想とは、全ての正の整数についてこの操作を繰り返すと最終的に1に到達する、という予想です。
例えば、7から始めると以下のようになります。
この予想は未解決問題として有名ですが、私はこのコラッツ問題を「複素数」(ガウス整数)に拡張する方法を考案しました。
私は何よりグラフィカルな表現が好きなので、コラッツ問題の複素化により面白い図形が得られることを期待したのです。
コラッツ問題は、奇数に対して「3倍して1を足す」という操作を行いますが、これは奇数の性質として、その結果が偶数になることがうまく働いています。逆に、仮に偶数に対して「3倍して1を足す」を行うと、結果は奇数になってしまい、次に2で割ることができなくなります。
複素整数での偶奇性に着目すると、奇数・偶数の概念に4通りの選択肢が存在します。
- 実部が奇数で虚部も奇数
- 実部が奇数で虚部が偶数
- 実部が偶数で虚部が奇数
- 実部が偶数で虚部も偶数
実部も虚部も偶数ならば、2で割ることができます。実部も虚部も奇数の場合、3倍して1を足すと、実部も虚部も偶数になります。したがって、実部も虚部も奇数の場合に「3倍して1を足す」を適用するのは自然です。
しかし、実部が奇数で虚部が偶数、あるいは実部が偶数で虚部が奇数の場合には、「3倍して1を足す」を適用すると、実部か虚部のどちらかが奇数のまま残ってしまいます。これでは次に2で割ることができません。
このガウス整数の偶奇性は以前にも見覚えがあったので、その時の経験を活かして、複素数版のコラッツ問題を定義しました。
これは、実部と虚部が両方偶数の場合に2で割り、そうでない場合に「3倍して1を足す」を行う関数です。ただし、「1を足す」の部分は、実部と虚部のそれぞれに対して「eceil」を適用することで、奇数を偶数に変換(外側に繰り上げ)しています。
足し方に関しては他にも選択肢が考えられますが、これが最も自然な選択肢の一つであると考えました。
まず、, , , をスタート地点にした場合、以下のようになります。
次に、 をスタート地点にした場合、以下のようになります。
他にも、 をスタート地点にした場合、以下のようになります。
そして、 をスタート地点にした場合、以下のようになります。
マンデルブロ集合的な描画
今回私は、この一つのコラッツ問題の複素化における「マンデルブロ集合」的な描画を試みました。
厳密にはマンデルブロ集合の描画方法とは異なりますが、似たようなもので、「ある点から開始して、関数を適用し続けたときのループ」(正確には振動なのだろうけど、小さな値に戻ってくるという意味で、発散に対しての収束と見なす)を調べています。
コラッツ予想が正しいと仮定すると、虚部が0、実部が正の整数は最終的に1に収束します( のループ)。
対称的に、虚部が0、実部が負の整数は最終的に に収束します( のループ)。
そして、虚部が正の整数、実部が の場合は最終的に に収束し、虚部が負の整数、実部が の場合は最終的に に収束します。
絶対値で見ると、以下のようになります。
繰り返しが生じるか、あるいは絶対値が1024を超えるまでの回数を色で表現したものが以下になります。

繰り返しが生じるか1024を超えるまでの絶対値の最小値を線形スケール、対数スケールで表現したものが以下になります。


上限が1024程度では、八方に伸びる線が白 (絶対値1に収束) になりつつも、まばらに黒っぽい値 (大きな値に発散) が見られます。
しかし、上限を65536に上げると、以下のようになります。

こちらでは、八方に伸びる線がほぼ白くなり、真ん中から右に伸びる線、すなわち自然数のコラッツの遷移が示す線が観測範囲では全て絶対値1に収束しています。
このプロットを見る限りでは、全て絶対値1で埋まっていた方が自然なようにも思えます。これはすなわち、コラッツ予想の肯定的な側面を示唆していると考えられます。
ただ、以下のような長い遷移も存在します。
をスタート地点にした場合、ステップ数99までの遷移は以下のようになります。
7+3i, 22+10i, 11+5i, 34+16i, 17+8i, 52+24i, 26+12i, 13+6i, 40+18i, 20+9i, 60+28i, 30+14i, 15+7i, 46+22i, 23+11i, 70+34i, 35+17i, 106+52i, 53+26i, 160+78i, 80+39i, 240+118i, 120+59i, 360+178i, 180+89i, 540+268i, 270+134i, 135+67i, 406+202i, 203+101i, 610+304i, 305+152i, 916+456i, 458+228i, 229+114i, 688+342i, 344+171i, 1032+514i, 516+257i, 1548+772i, 774+386i, 387+193i, 1162+580i, 581+290i, 1744+870i, 872+435i, 2616+1306i, 1308+653i, 3924+1960i, 1962+980i, 981+490i, 2944+1470i, 1472+735i, 4416+2206i, 2208+1103i, 6624+3310i, 3312+1655i, 9936+4966i, 4968+2483i, 14904+7450i, 7452+3725i, 22356+11176i, 11178+5588i, 5589+2794i, 16768+8382i, 8384+4191i, 25152+12574i, 12576+6287i, 37728+18862i, 18864+9431i, 56592+28294i, 28296+14147i, 84888+42442i, 42444+21221i, 127332+63664i, 63666+31832i, 31833+15916i, 95500+47748i, 47750+23874i, 23875+11937i, 71626+35812i, 35813+17906i, 107440+53718i, 53720+26859i, 161160+80578i, 80580+40289i, 241740+120868i, 120870+60434i, 60435+30217i, 181306+90652i, 90653+45326i, 271960+135978i, 135980+67989i, 407940+203968i, 203970+101984i, 101985+50992i, 305956+152976i, 152978+76488i, 76489+38244i, 229468+114732i, ...
現時点ではこの列が無限列であるかどうかは分かっていません。少なくとも、一方的に増えているわけではなく、途中で小さな値に戻ってくることもある(絶対値が単調増加ではない)ため、発散しているとは言い切れません。
この結果から、仮にこの複素数の遷移が発散しているとした場合、コラッツ予想が偽である可能性も示唆されます。あるいは逆に、このような複素数の特殊なケースを通じて、コラッツ予想が正しいことを示す手がかりが得られる可能性もあります。
コラッツの複素化はそれだけではない
…と、このように「一つの」コラッツ問題の複素化ができましたが、他にも思い思いの複素化が考えられます。
実際、この話題をオンライン数学デーで取り上げたところ、別の複素化も提案されました。
たまたま一昨日のアドベントカレンダーにも載せていただいたので、ご覧ください。
比較的整然とした私の定義によるプロットとは対照的に、病的なプロットが得られ、これはこれで面白いです。
詳細は下記記事をお読みください。今回は「日曜数学Advent Calendar 2025」の3日目の記事として投稿するため、永久に無料で閲覧可能とします。#数学デーhttps://t.co/zRbg11kWpN
— 「数学デー」公式 (@sugaku_day) December 3, 2025
おわりに
今回の研究で「コラッツ問題が解けた」わけではないのですが、プロットを見るに、個人的にはコラッツ予想が正しいという確信度がかなり上がりました。
皆さんも、ぜひこの複素化を試してみて、その発展として「また別の複素化」を考えてみてください。コラッツ予想を証明する手がかりが見つかるかもしれません。